『系図系譜研究』第1巻第3号に論文が掲載されました

当研究所所長・木下祐也の論文「系図系譜学の理論体系構築のための試論(3)――対象論補論――」が、学術雑誌『系図系譜研究』第1巻第3号に掲載されました。

論文概要

本稿は、先行発表の対象論において「歴代親族構成情報」として確定した系図・系譜の内容的実質を前提としつつ、先行研究において看過されてきた外形的定義の問題に取り組むものである。系図・系譜に関する先行研究を網羅的に検討した結果、先行研究のいずれもが、同義語として両者を無差別に扱うもの、定義を代入するとトートロジーまたは自己矛盾を来すもの、外形的特徴を欠くものなど、定義として致命的な欠陥を帯びていることが明らかとなった。  そこで本稿は、外形的定義を独自に定立することとし、系線の有無ではなく、続柄の表示方法が非言語的(図示)か言語的かを基準として、「書面(デジタルデータを含む。)であって主要な続柄を非言語で図示したものを系図とし、口承又は書面(デジタルデータを含む。)であって続柄を言語のみで表示したものを系譜とする」と定義した。これを内容的定義と統合することにより、「「歴代親族構成情報の記録のうち、書面(デジタルデータを含む。)であって主要な続柄を非言語で図示したものを「系図」とし、口承又は書面(デジタルデータを含む。)であって続柄を言語のみで表示したものを「系譜」」を系図系譜学における講学上の系図及び系譜の定義として確定し、行政法学の「講学上の○○」概念を援用する形で、名称と実質の乖離に対応する運用原則を提示した。 また、先行して発表した対象論(1)で提示した定義の要件論を修正した。

本論文により、系図及び系譜の定義が明らかとなりました。

論文情報

  • タイトル: 系図系譜学の理論体系構築のための試論(3)――対象論補論――
  • 著者: 木下祐也
  • 掲載誌: 『系図系譜研究』第1巻第3号
  • 発行: 家系研究協議会
  • DOI: https://doi.org/10.69352/keiron.1.3_1

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本文:系図系譜学の理論体系構築のための試論(3)
――対象論補論――

 最初に、この議論は、論理的には先に発表した対象論の一つとして内容的実質の議論の後、学問目的②「系図譜にまつわる諸事象の類型、傾向及び変遷を明らかにすること」の確定を含む目的論(2)の前に配置すべきであった点について、お詫び申し上げる。

(1)問題の所在

 系図・系譜は、全ての概念の出発点であることから、最初に定義する必要があるところ、対象論において、系図・系譜の内容的実質は「歴代親族構成情報」であると論じたものの、それはあくまで学問対象としての内容的実質だけを定義したものであって、系図・系譜そのもの(特に外形)を定義したものではない。そこで、系図・系譜の定義をどうすべきか、さらにはそれらの総称をどうするべきかが問題となる。

 なお、横系図などの様式的分類については、本稿では深入りせず、様式論において詳述するものとする。

(2)先行研究

 まず、先行研究において、系図・系譜のどのようなものとして定義されてきたかが問題となる。ただし、系図譜の内容については、対象論(1)における学問対象の内容的実質がそのまま妥当するため、ここでは系図・系譜それぞれの外形を軸に分析する。

 参考までに、民法897条1項本文は、定義規定ではないものの、「系譜」の語のみ用いている。この「系譜」には、家系図も含むと解されることから、民法上は系譜が系図を包含する扱いになっているようである。

 

ア 外形的区別を設けているもの

(ア)系譜が系図を包含するもの
(i) 太田亮説

 太田亮は、「系図とは、普通・血系、家系を載せた書き物を指すのであるが、猶ほ法脈、或は学問諸芸の伝統、及び荘園物等の継承等の系図もある。此等は系線を以つて、其の関係を一目瞭然たらしむべく図にした意味からで、自然と系図は図と云ふ点に重きを置かれて居る。

 次に譜は次第を追うて事実を列したる記録にて、この一字だけで世統来歴を表したものもあ」り、 「(系図)は図に重きを置き、系譜は文章である場合も多く、又系図上に載せた各個人の伝記を譜」と述べつつ、「系譜は譜牒全体を指し、系図は系図書きになったものに限定」するとした(以下、「太田第一定義」という。)。義江明子も基本的にこの定義に従うという

 さらに、「狭義に解すれば、血系、家系、及び學統、法脈、或は荘園、寶物の傳承等を図にした物と云ふ意味に取扱にれて居る様であるが、頼朝は義朝の子だと云ふのと、義朝―頼朝と書くのとは、文にしたと図にしたとの相違にあるが、書く人の氣持も、見る人に了解を與へる點も同一と云つてよからう。それ故廣義に云へば血系、家系等について書き誌した物に、たとへ其書籍,其記錄全體の目的が他にあつても、さう云ふ記載のある部分のみに、形式を超越し精神を酌めば、之を系図と云ふ事が出来よう。しかしながら普通には表し方の形式より見て前者のみを指して居る故、此處でも其の意味のものとして、系線又は文字の位置によって、血系、家系、學統、法脈其の他を読したものを系図として置かう。従つて氏文、姓氏録の如き書き方は系図でない」と定義した(以下、「太田第二定義」という。)

 要するに、太田亮は、全体名を「系譜」としつつ、系線を用いて続柄を図示したものを特に「系図」という整理をしている。

(ii) 久野俊彦説

 久野俊彦は、家譜について「家の系譜。歴代の続柄・経歴・事績を文章に記したものという点が系図に比される特徴である。」と定義した(以下、「久野第一定義」という。)

 また、久野俊彦は、系譜・系図について「氏や家の歴代を記したものが系譜であり、系譜・家譜・由緒書を略述し、罫線で図示したものが系図である。」とも定義した(以下、「久野第二定義」という。)

 要するに、系譜は、文章形式であり、系図は、一旦作成された系譜・家譜・由緒書を情報源として、これらを図示したものが系図であると定義している。

(iii) 鈴木正信説

 鈴木正信は、系譜を「政治的地位や血縁など、何らかの継承関係を伝える資史料の総称」ないし「政治的地位や血縁など何らかの継承の次第を伝える史資料」、系図を「そ(※筆者注:系譜)の中で特に系線(人名をつなぐ縦横の線)によって図化されたものや、人名の配列によって継承関係を視覚的に表現したもの」と定義した。さらに、口頭で伝えられていた系譜を「口承系譜」であると説明し、文章の形で伝えられた系譜を「文章系譜」と定義し、系線を使用する「竪系図」「横系図」「車系図」をあわせて「系線系図」と総称する場合もある

 「人名の配列によって継承関係を視覚的に表現したもの」(人名配列型)を取り上げた点については、非常に説得的であり、他の先行研究にはないから、功績でもある。

 しかし、この定義に対しては、問題が2点ある。

① 「系譜」を総称用語としたため、同氏の原稿中に限って読解する場合はともかく、(3)において詳述するとおり、学界一般に通用させる学術用語としては歴代親族構成情報そのものを指す語と紛らわしく、かつ、系図も系譜と同様に重要な概念なのに一方で他方を代表させることになり、不適切である。

② 系図の定義に「系線(人名をつなぐ縦横の線)によって図化されたもの」(系線型)と「人名の配列によって継承関係を視覚的に表現したもの」(人名配列型)の2つが含まれているため、系線系図という語が必要になったこと自体は論理的に一応説明がつくが、人名配列型に対応する名称が存在しない。

③ 人名列記型は図なのかという点で疑問がある(この点は様式論で詳述する)。

 以上、鈴木説については、全体を総称する語、人名配列型の名称のそれぞれについて、別途用語を設定すべきであったといえる。

(iv) 上田晃説

 上田晃は、系図を「系譜を系線によって図式化したもの」と定義したが、系譜の定義は掲載されていない。これは、情報源としての系譜(一旦作成された系譜)を図式化したとも解されるし、歴代親族構成情報を直接系図に図式的に記載したとも解される点で問題がある。

(v) 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』

 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』は、系譜について「親子関係の連鎖をさし,またはそれを記録した図や文書をいう。」と定義し、系図について「血縁関係をはじめ,財産,地位,学芸などの継承関係などを明らかにする系譜を図式の形で表現したもの」で、「(a) 血縁の継続関係を示すもの」と「(b) 血縁関係以外の系図には,宗教上の系統を示す伝法血脈,仏舎利継承系図,宗派図,諸寺院の別当,住持などの系図,学芸面における和歌の道統歌,琵琶の相承系図,財産としての荘園所領の相続を示す伝領系図などがある。」の2種類があると定義した

 系図について、「図式の形で表現したもの」という特徴を挙げた点は説得的である。

 しかし、この定義には問題が2点ある。

①系譜の語について「親子関係の連鎖」と「それを記録した図や文書」「血縁関係をはじめ,財産,地位,学芸などの継承関係などを明らかにする」の3義を定めている(これについては、用語論で詳述する)

②系譜の語について「図や文書」と定義しており、これは図示したものと文章のみによるものを指すものと解されるが、系図については「系譜を図式の形で表現したもの」と定義している。系図の定義に系譜の定義を代入すると、「血縁関係をはじめ,財産,地位,学芸などの継承関係などを明らかにする親子関係の連鎖をさし,またはそれを記録した図や文書を図式の形で表現したもの」となって、「~を記録した図を図式の形で表現したもの」というトートロジーになっている。

(vi) 『日本民俗事典』

 『日本民俗事典』は、系図について「祖先代々の系譜関係を書き記した図表。」と定義し、系譜について「通例は家または血統の継承の序列、もしくはその記録」で「家の系譜とは特定の家の祖先との一定の位置関係を示すもので、その家に出生した者だけでなく、出生時には他の家の成員であった者でも、婚姻・養子縁組によってその家の成員になる際に「オヤコの縁結び」によって、系譜関係が設定されることがある。」、さらに「家の本来の系譜とは『家の創設・分岐にあたって、いわば本家と分家との間に相互にその出自を認知し合うことによって設定される関係』」と定義した上で、「家の系譜においても、また家の本来の系譜においても、生物学的な血縁関係者以外にも系譜関係が設定される」と説明している

 「関係を書き記した図表」という文言で関係性を図示している旨表している点で、説得的である。

  しかし、この定義には問題が2点ある。

①要するに「系譜関係」という文言において「系譜」の語が親族と同様の意味で使われているため、多義的用法の問題がある。

②系図の定義に系譜の定義を代入すると、「祖先代々の通例は家または血統の継承の序列、もしくはその記録関係を書き記した図表。」となって「関係」の語が「続柄」でなく、「祖先代々の通例は家または血統の序列や記録にまつわる諸々を書き記した図表。」のようになり、系図のイメージとは齟齬が大きい。

(イ)系図・系譜を対等に区別するもの
(i) 菅野雅雄

 菅野雅雄は、「一般に「系図」とは、系線(縦〈竪〉線で親子関係、横線で兄弟・姉妹関係を示すことはよく知られていよう)で人名を繋ぎ表わしたものをいい、「系譜」とは文章系図、たとえば「其の大年神、神活須毘神の女、伊怒比売を娶して生める子は、大国御魂神」(『古事記』)のごときものを意味するようであるけれども、学問的には、「系譜」と「系図」は同意で、氏族・家族の血縁関係を始祖から歴代にわたって書き表わしたものである」と主張した

 系図を「系線で人名を繋ぎ表わしたもの」であるとした点については、配偶関係を明記していないものの、一応説得的ではある。

 しかし、系譜を「文章系図」とした点については、これに「系図」の定義を代入すると、「『系譜』とは文章系線で人名を繋ぎ表わしたもの」ということになって、意味不明であり、瑕疵がある。すなわち、「系譜」を「文章〔で記した歴代親族構成情報〕」と定義しようとしたところを、「文章系図」という不適切な合成語を採用した結果、系図の定義を代入した瞬間に崩壊する構造になっている。

(ii) 青山幹哉説

 青山幹哉は、系図譜の外形的定義について、次のとおり、断続的に定めている。

 系図は、図式化に力点があり、系譜は譜文すなわち文章に重点を置く言い方であるとし、文章系図は、「親子関係などによる人名連鎖を文章で表現したもの」をいい、系線系図は、「系線を用いた系図」をいい、「竪系図(柱系図)、横系図、車系図(円形系図)に分けられる」と分類した。青山説では、「系線系図」を「線系図」とも呼ぶ。青山説は、系譜については、定義付けしておらず、一貫して系図と称している点に特徴がある

 この定義に対しては、瑕疵が2点がある。

① 「系譜」の語を使わないため、類型化分析が妨げられる。

② 「文章系図」の語について、系線を用いない系図と定義しており、「系線を用いない」ことを定義中の重要な要素として含んでいるのにもかかわらず、「系図」の語を用いていることから、文章で書かれているのに「図」であるかのような字面になっており、混乱を招きかねない。

③ 系線を使用する「竪系図」「横系図」「車系図」をあわせて「系線系図」と総称しているが、「系図」の定義において、すでに「系線を用いるもの」という意味を重要な要素として含んでいる以上、「系線系図」は「系線を用いている」という定義づけを二重にしていることになっておかしい。すなわち、<系図=系線を用いている系図>なので、「系図」に既に系線が含意されているのに、「系線系図」にこれを代入すると、<系線系図=系線系線を用いている系図>となって、定義要素が二重になっている。まるで誤植のようである。

(ウ)系図が系譜を包含するもの
(i) 岩本・八木説

 岩本卓也・八木大造は、下記の通り定義した

  • 家譜「系譜、家系譜、家譜、系図、家系図など一般的には同じ意味です。本書ではわかりやすいように系譜、家系譜、家譜を同じ意味と考え名前、出生年月日、没年月日のほか、経歴や残した功績、その他のエピソードなどを個人ごとに表でまとめたものを「系譜」と呼ぶことにします。」
  • 家系図「系譜、家系譜、家譜、系図、家系図など一般的には同じ意味です。わかりやすいように本書では家系図という表現に統一しています。家系図とは家の先祖から子孫に至る一族の系統を書き記した図のことを言います。但し、家系図には養子として家督を継いだ者も含まれますので、家系図イコール血統(血筋)の図とはなりません。」
  • 家系譜「系譜、家系譜、家譜、系図、家系図など一般的には同じ意味です。わかりやすいように本書では家系図という表現に統一しています。」
  • 系図「系譜、家系譜、家譜、系図、家系図など一般的には同じ意味です。わかりやすいように本書では家系図という表現に統一しています。」
  • 系譜「系譜、家系譜、家譜、系図、家系図など一般的には同じ意味です。本書ではわかりやすいように系譜、家系譜、家譜を同じ意味と考え名前、出生年月日、没年月日のほか、経歴や残した功績、その他のエピソードなどを個人ごとに表でまとめたものを「系譜」と呼ぶことにします。」

  要するに、系譜(家系譜・家譜)を「名前、出生年月日、没年月日のほか、経歴や残した功績、その他のエピソードなどを個人ごとに表でまとめたもの」と定義しつつ、それらを含めた家系図(系譜、家系譜、家譜、系図)を「家系図とは家の先祖から子孫に至る一族の系統を書き記した図のこと」と定義しているため、系譜(家系譜・家譜)が表なのか図なのか、どちらとも判別しがたい定義をしている。

イ 外形的区別を設けていないもの

(ア)系図・系譜を同義語として扱い、一方の外形のみを定義するもの
(i) 網野善彦説

 網野善彦は、「系図・系譜は、ある時点における特定の集団、あるいはまれに個人の自らに関わる歴史叙述の一形態と考えることができる。例えば系図は、氏、一門、家、個人がいかなる祖先に出自し、どのような経緯を辿ってその時点にまでいたっているか、また自らと関わりのある範囲がどこまで及んでいるかを表現しており、結果として一定の範囲の血縁で結ばれた集団の出自、範囲、その内部の小集団の関係を図示したものといえよう。」と定義した

 系図については、「関係を図示」という特徴を挙げている点は、説得的であるが、系譜については、冒頭で「・系譜」と述べたのみであり、言及していない。

(ii) 小笠原長和説

 小笠原長和は、「系図とは系統を図示することで、系は繁・継を意味し、血統や家系を示すために作られた書物である」と定義した

 この定義は、系図について、「系統を図示することで」という特徴を挙げている点では、一応は説得的である。

 しかし、この定義には問題がある。すなわち、「系図とは系統を図示することで、」の部分について、「系図とは」の後に読点がなく、また、その後に「系は繁・継を意味し、」という「系図とは」が掛からない文が存在するため、「系図」=「系統を図示すること」というように系図の語が動詞であるかのような定義文になっている。これは仮に「系は繁・継を意味し、」がなかったとしても、「系図とは系統を図示することで、血統や家系を示すために作られた書物である」となって「系統を図示することで、血統や家系を示すために」という似たような修飾語が並ぶことになって奇妙である。さらに「血統や家系を示すために」も除外して修飾関係を解析しても、「系図とは系統を図示することで、作られた書物である」となって繋がりが悪い。「系図とは、血統や家系を示すために作られた書物である」であれば文法的には妥当であるが、そのようにはなっていない。

 よって、文法的におかしな定義を採用することはできない。

(iii) 『百科事典マイペディア』

 『百科事典マイペディア』は、系譜について「現在の地位の正当性を説明するために過去の系統をのべたもの。」と定義し、系図について「系譜を図示したもの。」と定義している

 系図について、「図示したもの。」という特徴を示した点で、一応の説得力がある。

 しかし、この定義には、系譜について「~をのべたもの」というだけで、表現方法についての言及がない点で問題がある。

(iv) 『旺文社日本史事典 三訂版』

 『旺文社日本史事典 三訂版』は、系図について「先祖から代々の縦横の相互関係を書いた図表」と定義している

 「相互関係を書いた図表」という文言で関係性を図示している旨表している点では説得的である。

 しかし、この定義には、「縦横の相互関係」が意味不明で、どういう相互関係をどのように図表化しているのかが明らかでないという問題がある。

(v) 加藤秀幸説

 加藤秀幸は、系図について「混用して系譜ともいう。先祖から代々の血統,続柄,家系を記述した文書をさす。狭義には,系譜は次第を追って血統と子孫の各個人の事歴を記述したものであるが,系図は血縁の継続状態をとくに系線によって図示し,そのつながりを一見して理解しうるようにしたものである。のち広義には系譜,家譜をも含め,家に付属する財産,所領,職業の継承を特記し,さらに僧侶の法脈・血脈(師資相承),寺院の住持の歴代,学術・武術をも含む諸芸の伝統をも表したものをいう」と定義している

 系図について、「系線によって図示し」という特徴を挙げた点では説得的である。

 しかし、この定義には問題が2点ある。

①系譜については、「次第を追って血統と子孫の各個人の事歴を記述したもの」という内容をいうだけで、外形的な特徴には言及していない。

②「系図は血縁の継続状態をとくに系線によって図示し,そのつながりを一見して理解しうるようにしたもの」という奇妙な言い方をしている。すなわち、「その」は「血縁の継続状態」を指すと解されるが、「血縁」は「血のつながり」というような意味であるから、「継続状態」を観念できない。なぜ端的に「続柄」という語を用いないのか理解しがたい。

(vi) 堀内陽介・水口毅・守田智説

 堀内陽介・水口毅・守田智は、「家系図とは生物個体の親子関係を線であらわした図」、「家系図とは親子関係にある生物個体を線で結んだ図」とする

 「関係を線で結んだ/あらわした図」という点では一応説得的ではある。

 しかし、系譜については言及していない点で、問題がある。

(vii) 『日本大百科全書(ニッポニカ)』 

 『日本大百科全書(ニッポニカ)』は、系図について「祖先を記し、子孫の系統を明らかにするために、家系を図式化して示したもの。系譜、家譜(かふ)ともいう。」と定義している

 系図について、「家系を図式化して示したもの」という特徴を挙げた点では説得的である。

 しかし、この定義は、系譜・家譜と系図を同義語として定めているという点で、問題がある。

(viii) 『広辞苑 第7版』

 『広辞苑 第7版』は、系図について「①先祖から代々の系統を書きしるした表。系譜。家譜。②事物の来歴。由緒。由来。③クロダイの若魚の異称。かいず。」と定義し、系譜について「血縁関係や系統関係を図式的に記したもの。系図。譜図。②物や人のつながり。系統。」と定義し、系統については「(①・②・③省略)④一族間の血統。⑤〔生〕㋐生物の種あるいは群の進化の過程での由来。㋑祖先を共通とし、遺伝子型をほぼ等しくする生物の個体群。」と定義した

 この定義は、系図と系譜・家譜を同義語としつつ、系図という語に『図』が含まれているにもかかわらず『表』と定義し、逆に系譜に『図式的』という特徴を付与している点で妥当性と論理的整合性を欠く。

(ix) 近藤安太郎説

 近藤安太郎は、系図・系譜について、「系図はまた一に系譜ともいう。一般概念としては、系図は親子・兄弟などの関係を系線でつないだ単純なものをいい、系譜はこの系図を文章にしたものか、系線でつないではいても各個人の履歴などを詳しく注記したものをいうようである。しかし、後者のような形態ではあっても系図といい、現に『系図纂要』とか『系図綜覧』などという書物もあるから、厳密な区分はなく、ただ言い方が違うというだけに過ぎない。」と定義した

 この定義は、系図と系譜を同義語として扱うようでいて、外形についてはいずれとも判別しがたい。すなわち、系図は、「親子・兄弟などの関係を系線でつないだ単純なもの」の1種類だが、系譜は、「系図を文章にしたもの」「系線でつないではいても各個人の履歴などを詳しく注記したもの」という2種類があるとしている。

 まず、「系図を文章にしたもの」を系譜と呼ぶ点については、歴代親族構成情報を一旦系図として作成し、それを情報源として文章化したものを系譜といっていると解するのか、「系図」を歴代親族構成情報の意味で捉えて、それを直接系譜として記載するものと解するのか、いずれなのか判然としない。

 次に、「親子・兄弟などの関係を系線でつないだものについて、「単純なもの」と「各個人の履歴などを詳しく注記したもの」に二分しているが、これは外形的特徴ではなく、内容の詳細さで系図か系譜(第二義)かを判別しようとするものであり、系線の有無をさほど重視していないものと考えられ、要するに「系線でつないだ単純なもの」以外は系譜であると定義している。

 もっとも、これは近藤自身の考えではなく、一般概念つまり広く普及していると近藤が理解している定義を紹介したに過ぎず、近藤自身は、結局は「系図はまた一に系譜ともいう。」「厳密な区分はなく、ただ言い方が違うというだけに過ぎない。」、すなわち系図と系譜を同義語として捉えている。

(イ)外形的定義を全くしないもの
(i) 佐伯有清説

 佐伯有清は、系図を「古代氏族・中世家族などの系統・続柄を始祖に遡って歴代の人名・事跡を書き記したもの。系譜ともいう。」と定義した(以下、「佐伯第一定義」という。)

 また佐伯は、系図を「氏族・家族の血縁関係を始祖から歴代にわたって書きあらわしたもの。系譜ともいう。「系」は血筋のつづきを示し、 「図」はえがくの意。「譜」も系図と同意語。系図には氏系図・家系図のほか、国造・神主、 寺院の別当・住持の継承を示したもの、あるいは学芸の道統、荘園・宝物の相伝を記した系図もある。」とも定義した(以下、「佐伯第二定義」という。)。宝賀寿男もこの定義を支持している

 しかし、この定義には、「「譜」も系図と同意語」ということであるから、「系譜」の語にこれを代入すると、「系譜」=「系系図」となって意味不明となる(「系譜」の「系」が脱字しただけの可能性もある)という問題がある。

 さらに佐伯は、「系図とは家系を図示したもの、系譜とは家系を図示しないで、系統を列叙したもので、系図と系譜とは、本来別のものであるのに混用されているという解釈がある。しかし、田中卓氏がいうように、系図は「一見、系線で図示されたように思えるが、もともと『系』は血筋のつづき、『図』はえがくの意であるから、必ずしも系線があるとは限らない」のであって、系譜と系図とは、古くは同じものとみなしてさしつかえない。」とも定義した(以下、「佐伯第三定義」という。)

 要するに、佐伯は、系図・系譜を同義語として扱っているが、「系線で図示されたもの」を系図と称するのは自然な発想であるし、字義ないし語源が「血筋のつづきをえがく」という意味だとしても学術用語としてどう定義するかは別であるから、学術用語としてどう分類するかと語源を混同したものといわざるをえない。

(ii) 亀長洋子説

 亀長洋子は、系図について「家系に関わる情報に言及がみられるさまざまな資料の総称で、樹形図、家譜、族譜、教会登録記録、遺言、日記、殺人帳、課税記録なども含む」と定義した。「家系に関わる情報に言及がみられるさまざまな史資料の総称」には、外形的要件が書かれていないし、例示列挙されているものには、「樹形図」という図形を想起させる類型が挙げられつつも日記や遺言という通常は文章で表現されるものも含まれていることから、内容的要件を定めたのみであって外形的要件については全く念頭にないものと思われる。

(iii) 『デジタル大辞泉』

 『デジタル大辞泉』は、系譜について「1 先祖から子孫に至る一族代々のつながり。師弟関係などのつながり。また、それを書き表した図や記録。系図。2 同じような要素・性質を受け継いでいる事物のつながり。」と定義している

 この定義には、系譜と系図を同義語として定めているという点で、問題がある。

(iv) 角川新版日本史辞典説

 管見の限り、系図譜についての辞書の説明は以下のとおりである

 『角川新版日本史辞典』は、系図について「系譜とも。個人間の伝承関係を始祖から書き連ねた表。血統・家系を示したものが多いが、法系・学統や芸能・職務・所領等の相承を示す系図もある。形態的には縦系図と横系図があり、一般に前者が古いとされる。」と定義した

 すなわち、系図・系譜を同義語として扱っており、外形的定義としては「書き連ねた表」「縦系図と横系図がある」というだけで、字面から縦型と横型があるようだということしか示唆していないし、「書き連ねた表」については、系図のみを指し系譜を排除しているように読むことができ、形式を「表」に限定するのは不当である。

(v) 吉岡吾郎説

 吉岡吾郎は、系譜・系図について、「血族の関係を、主として親子の間を系で繋ぐ形で示したもの。閲歴等に関して文章で述べる形のものを一般に系譜と称し、これに対して閲歴などはあっても注の形で最小限に止められている形のものを系図とよぶことが多い。女子については、概して省略されるか、男子のあとに「女子」とのみ書かれる。」と定義付けした

 この定義には問題がある。

 系図と系譜ともに「系で繋ぐ形で示したもの」であり、「閲歴」(おそらく履歴のこと)を文章形式を系譜とし、最小限の注記で示すにとどまるものを系図と定義していることから、一人一人について記載された情報量が詳細なものを系譜、少ないものを系図と区分しているものと解される。つまり、外形的特徴というより記載内容の情報量での区分である。

(vi) 菅野雅雄が紹介した説

 菅野雅雄は、「学問的には、「系譜」と「系図」は同意で、氏族・家族の血縁関係を始祖から歴代にわたって書き表わしたものである、という。」と、定義を紹介した

 系図・系譜を同義語として扱い、外形的定義をしていない。

(vii) 飯沼賢司

 飯沼賢司は、「系譜史料は、系譜を探ることができるあらゆる史料であり、近年では、このような系図・家譜・由緒書の類ばかりではなく、もっとさまざまなものが系譜史料として考えられるようになった。(中略) 第一は、系図や家譜や由緒書など、ある意図をもって編纂された史料である。(中略) 第二は、文字史料ではあるが編纂された史料ではないもの。姓や名前といった第一タイプの中心となる系譜史料である。(中略) 第三は、墓やそこに葬られる骨などの史料であり、これらは考古学との関連から近年注目される史料である。」と定義づけた

 外形的定義はなく、系図と系譜を同義語として扱っている。

(viii) 『精選版 日本国語大辞典』

 『精選版 日本国語大辞典』は、系譜について「① 血縁などのつながりを示す記録や表。家譜。系図。② もののつながり。系統。」と定義し、系図について「① その家の先祖から代々の系統を書き記した表。系譜。家譜。譜図。② 由来。由緒。来歴。履歴。③ 黒鯛(くろだい)のこと。かいず。」と定義している

 この定義には、問題が2点ある。

①系譜と系図を同義語として定めている。

②系図について、「由来。由緒。来歴。履歴。」という由緒書と混同しかねない第二義がある。

(ix) 『図書館情報学用語辞典 第5版』

 『図書館情報学用語辞典 第5版』は、系譜について「個人,氏族,家族,集団などの続き,継承の関係を書き表したもの.系図ともいう.個人,氏族,家系の系譜は,血縁関係を始祖から歴代にわたって書き表したもので,氏系図,家系図,家譜などともいわれる.集団については,教会,寺院の司祭,別当,住持などの継承関係を示したものや,武芸,学問,芸術の秘伝などの継承関係を示したものがある.また,宝物や特定の土地,荘園などの相続関係を記したものもある.」と定義している

 この定義は、系譜と系図とのみならず氏系図、家系図、家譜を全く同義語とした上、内容をいうだけで、外形的な特徴には言及していない点に問題がある。

(x) 宝賀寿男

 宝賀寿男は、基本的には佐伯有清説を指示しているところ、その系図・系譜の語の使用状況は、系図・系譜の総称を「系図類」としたり、「系図」で代表させたり、「系図史料類」「系図研究者」、「系図史料」の語を使用したりするなど、「系図」の語を好んで使用しがちである。もっとも、同一の論考内で特に理由もなく「系図史料」と「系譜史料」や「系譜仮冒や系図偽造について」というように系図と系譜の語が混在しているケースもあるから、あまり意識的に使い分けているわけではないのかもしれない。

(3)検討

ア 先行研究の整理と問題の所在

 以上のとおり、先行研究における「系図」・「系譜」の外形的定義には、いずれも複数の欠陥があることが明らかになった。一方に他方を包含するもの、いずれとも判別しがたいもの、定義を代入するとトートロジーや自己矛盾になるものがあるし、線を使用して続柄を表示したものと文章だけで表示したものという、外見的に全く異なる2種が存在するにもかかわらず、両者を同義語としたりするものなどである。

 先行研究における定義は、全体の傾向として、講学上の定義ではなく、基本的な様式名と実際のズレという事実上の傾向を説明したものになっており、定義としては多かれ少なかれ稚拙である。精緻化原則を基本原理とする系図系譜学においては、それらを看過することはできない。

 そのため、ここでも先行研究のいずれかを採用するのではなく、独自に定義することとした。すなわち、系図及び系譜をどう定義すべきか、また、それらの総称を何という語にすべきかが問題となる。

イ 定義定立

(ア)内容的定義

 対象論(1)で詳述したとおり、「歴代親族構成情報」が系図・系譜の内容的実質であることから、系図・系譜の内容的定義は、「歴代親族構成情報の記録」とする。

(イ)外形的定義

 次に、外形的定義について検討する。

 先行研究では、系図と系譜を同義語とするものが相当数あるが、先行研究では、系線を用いるか文章で表示されるか、すなわち図示されているか言語で表示されているかで区別するものも多いようである。これ自体は、系線があることで明らかに外観が異なるのだから、当然の区別といえる。また、系図には地図とか図表にも通じる「図」の文字が含まれるため、系線を使用して視覚的に表示したものを指して系図というのが自然であって、系線を用いないものを系図というのは違和感を禁じ得ない。さらに、様式の相違について分析することに学術的価値が認められる。そうすると、両者を区分する必要と実益がある。

 両者を区別するにあたっては、図示されているか言語で表示されているかが関わる要素が重要になってくる。これについて、先行研究上では「関係」の語が用いられているが、これは実質的には「続柄」を意味する。「関係」というと家族構成員間の感情的関係のような意味にもとることができ、そうすると系図ではなく相関図の説明になってしまうため、「関係」の語を採用することはできず、直接的に「続柄」というべきである。

 「続柄」の語を用いて両者を表現すると、とりあえず、「続柄を図示したもの」と、「続柄を言語で表示したもの」ということができる。

 前者については、書面(デジタルデータ)で伝えられていることは、図示という性質上明らかであるところ、系線で続柄を図示しているものはもちろん、系線を用いなくとも、続柄を示唆する方式ないしデザインで書面上に人名を配置したもの(❶)については、「続柄を非言語的に図示したもの」ということができる。他方で、続柄を系線で図示しているもの(❷)であっても、注記として「母〇〇氏女」とか「実〇〇男」などという続柄が書かれていることもあるため、必ずしも全ての続柄が系線で表示されているとは限らないから、「主要な続柄を図示したもの」と微調整するべきことになる。すなわち、❶からは、系線以外の非言語的図示手段を含むということができ、❷からは、全ての続柄ではなく主要な続柄が非言語で図示されていれば足りるということができる。これらを踏まえると、「主要な続柄を非言語で図示したもの」と定義するのが相当である。

 後者については、口承で伝えられたものと、書面(デジタルデータを含む。)で伝えられたものの2通りがあるところ、「口承又は書面(デジタルデータを含む。)」という択一関係はあるものの、いずれも「続柄を言語で表示したもの」と定義して差し支えない。

 以上を総合すると、書面(デジタルデータを含む。)であって主要な続柄を非言語で図示したものを「系図」とし、口承又は書面(デジタルデータを含む。)であって続柄を言語のみで表示したものを「系譜」として両者を区別して定義するべきである。

 このように定義すれば、口承で伝来したものと書面上の文章で表示されているものについては、いずれも言語で続柄を表示したものといえるし、戸籍簿や宗門人別改帳などの歴代親族構成情報を記録した行政文書も続柄を言語のみで表示したものであるから、系譜の一種として分類されることになる。

 なお、この定義では、現代の研究者による氏族研究書(一族史)も系譜に該当することになりうるため、研究書を系譜として扱うことに違和感を生じさせるかもしれないが、この点については方法論において詳述する。そもそも尊卑分脈等の古来の系図・系譜集も編者の個別研究の成果であって研究書の一種ともいえる。他方で、研究書を系譜から除外すると、近現代において子孫以外の者すなわち先祖調査業者の手によって編纂された系譜まで除外することになりかねず、不都合である。そのため、定義としては、上記を採用し、方法論において取り扱いを定めれば足りる。

(ウ)内容的定義と外形的定義の統合

 以上のとおり、内容的定義を「歴代親族構成情報の記録」とし、外形的定義としては、書面(デジタルデータを含む。)であって主要な続柄を非言語で図示したものを「系図」とし、口承又は書面(デジタルデータを含む。)であって続柄を言語のみで表示したものを「系譜」とすることとなったため、「系図」及び「系譜」の定義として両者を統合すると、「歴代親族構成情報の記録のうち、書面(デジタルデータを含む。)であって主要な続柄を非言語で図示したものを「系図」とし、口承又は書面(デジタルデータを含む。)であって続柄を言語のみで表示したものを「系譜」」と定義できる。

(4)結論

 よって、系図及び系譜の定義は、次のとおりとする。

 

歴代親族構成情報の記録のうち、
系図 書面(デジタルデータを含む。)であって主要な続柄を非言語で図示したもの
系譜 口承又は書面(デジタルデータを含む。)であって続柄を言語のみで表示したもの

 

 ここで結論した定義に基づいて、これ以降、「講学上の系図」とか「講学上の系譜」などということがある。これは行政法学に倣ったもので、学問的分類名と実際の名称が異なる場合に後者を「講学上の○○」と呼称する。系図系譜学もこれに倣って、書面の表題が『A家系図』や『B家年譜』であったとしても、外形上、続柄を言語のみで表示したものである場合は、「講学上の系譜」に分類することになる。上記定義は内容と外形の各要件を定めるものであるから、地位継承次第等が記載された書面の表題が「C系図」であって人物間の関係性が線で図示されているとしても、内容的要件を満たさないのだから、系図系譜学では「講学上の系図」「講学上の系譜」としては扱わないこととなる

 なお、系図・系譜の総称については用語論、詳細な形態的分類とその定義については様式論で詳述する。

    1. 論文概要
    2. 論文情報
    3. 論文へのアクセス
    4. (1)問題の所在
    5. (2)先行研究
      1. ア 外形的区別を設けているもの
        1. (ア)系譜が系図を包含するもの
          1. (i) 太田亮説
          2. (ii) 久野俊彦説
          3. (iii) 鈴木正信説
          4. (iv) 上田晃説
          5. (v) 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
          6. (vi) 『日本民俗事典』
        2. (イ)系図・系譜を対等に区別するもの
          1. (i) 菅野雅雄
          2. (ii) 青山幹哉説
        3. (ウ)系図が系譜を包含するもの
          1. (i) 岩本・八木説
      2. イ 外形的区別を設けていないもの
        1. (ア)系図・系譜を同義語として扱い、一方の外形のみを定義するもの
          1. (i) 網野善彦説
          2. (ii) 小笠原長和説
          3. (iii) 『百科事典マイペディア』
          4. (iv) 『旺文社日本史事典 三訂版』
          5. (v) 加藤秀幸説
          6. (vi) 堀内陽介・水口毅・守田智説
          7. (vii) 『日本大百科全書(ニッポニカ)』 
          8. (viii) 『広辞苑 第7版』
          9. (ix) 近藤安太郎説
        2. (イ)外形的定義を全くしないもの
          1. (i) 佐伯有清説
          2. (ii) 亀長洋子説
          3. (iii) 『デジタル大辞泉』
          4. (iv) 角川新版日本史辞典説
          5. (v) 吉岡吾郎説
          6. (vi) 菅野雅雄が紹介した説
          7. (vii) 飯沼賢司
          8. (viii) 『精選版 日本国語大辞典』
          9. (ix) 『図書館情報学用語辞典 第5版』
          10. (x) 宝賀寿男
    6. (3)検討
      1. ア 先行研究の整理と問題の所在
      2. イ 定義定立
        1. (ア)内容的定義
        2. (イ)外形的定義
        3. (ウ)内容的定義と外形的定義の統合
    7. (4)結論
  1. 試論(1)の一部変更(定義の要件論の修正)

試論(1)の一部変更(定義の要件論の修正)

 対象論(1)においては定義の要件について暫定的な記述にとどまっていたが、4(2)イを下記の通り修正するものとする。もっとも、この修正は、要件の実質的な変更を伴うものではないから、目的論・対象論内の議論に影響しない。

 

「 「定義」は、①物事・概念について、被定義項に該当するか否かの判断基準として機能するものであり(定義の機能的要件)、かつ、その文言が、②被定義項として想定されるもの全体に通底する要素・性質を表現するものであって(本質的属性の表現(Essential Attributes))、③定義項に被定義項またはその実質的な同義語を含まず、(循環定義の排除(Circular Definition))、④曖昧不明瞭な文言及び比喩的表現がなく(一義明確性(Void for Vagueness))、⑤想定しない対象を含みうるものでなく(過度広汎性の排除(Overbreadth))、⑥含むべき対象を除外するものでない(過小包摂性の排除(Under-inclusion))ことを要する(用語論参照)。

 そのため、辞書や先行研究における系図譜の定義を次の通り列挙した上で、各定義がこの要件を充足するかという観点から批評した。そして、系図譜の内容的実質を検討するための注意点を抽出した。」